2018年12月19日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年12月度の授業

平成30年12月16日(日)に12月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、はじめに『論語』の文章で「故きを温(たず)ねて新しきを知る 以て師と為るべし」を学びました。意味は、「昔のものごとをよく調べ、研究して、そこから現代に応用できる新しい知識や考え方を見つけ出す。そうした姿勢が大切で、そういう姿勢でなければほかの人を教える先生にはなれない。」です。「論語読みの論語知らず」は、立派な本を読んでも、頭で分かったつもりになっているだけで、それを実行できない人のことを言います。栗田先生は、本を読んで、自分で考えることの大切さを説かれています。
 授業後半では、ことわざや言葉を5つ学びました。「木を見て森を見ず」は、中国の古典にある言葉のようですが、実は英語のことわざがモトになっています。細かい点だけに注意して、大きく全体をつかまない、という意味です。中国には「鹿を逐う(おう)者は山を見ず」という言葉があり、利益を得ようと熱中する人は、ほかのことが目に入らない、という意味です。「一石二鳥」は、明治時代に作られた四字熟語で、欧米のことわざがモトになっています。中国にも同じような意味の言葉で、日本でも、よく使われている「一挙両得」があります。また、一石二鳥や一挙両得とは反対の意味で「二兎を逐う者は一兎も得ず」がありますが、これはローマ時代のことわざがモトになっています。このように、ことわざや言葉の出所についても教えて頂きました。

【第二時限】岡本彰夫先生(奈良県立大学客員教授、元春日大社権宮司)

 岡本先生は、かつて春日大社権宮司を務められ、現在は奈良県立大学客員教授、東京で人材育成の塾長としてご活躍中です。授業では、今から200年程前の江戸時代に、多摩地方で本当に起きた不思議な事件について解説して頂きました。多摩郡窪村にいた藤蔵という男の子が、文化7年、6歳の時に疱瘡で亡くなります。それから5年後の文化12年、多摩郡中野村に勝五郎という男の子が生まれます。勝五郎は、8歳の時、自分の前世は窪村の藤蔵だと姉のふさに話します。また、自分が生まれる前に家の中の様子を見ていて、母が働きに出る話を知っているなど、勝五郎の生まれ変わりの話は評判になり、中野村の領主だった多門傳八郎は勝五郎を呼んで話を聞きます。その話が平田篤胤の『勝五郎再生記聞』という書物に記されています。
 また、兵庫県の豊岡に、一度亡くなったお夏という女性が息を吹き返す『お夏蘇生物語』というお話があります。お夏は、母親が翌年、自分は4年後に亡くなることを言い当てます。お夏は、生まれ変わる前に極楽浄土を見てきたと言います。
 このように、世の中は目に見えることがすべてではなく、神様やご先祖様は人が見ていないところを見ておられるということです。人の命ほど大切なものはなく、自殺は絶対にしてはならない。「上へ上へと伸びるより、奥へ奥へと歩みなさい」とは、地位など上には限度があるが、奥には際限がなく、深みのある人になって豊かな人生を歩んでください、という教えです。


 次回、平成31年1月度の授業は、1月13日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は吉川伸治先生(神奈川県内広域水道企業団企業庁・元神奈川県副知事)をお招きします。吉川先生の講義タイトルは、「飲水思源ー神奈川の水道を考えるー」です。

2018年11月28日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年11月度の授業

平成30年11月11日(日)に11月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、栗田先生がこれまでの授業でも何度か紹介された「歴史上のある時期に違う国では何があったか」という見方について教えて頂きました。
 明治新政府が成立したのは1868年です。その1年前、スウェーデンの化学者ノーベルがダイナマイトを発明しました。アメリカでは1861年~1865年の4年間にわたって南北戦争があり、勝利を収めた北部の側を指導した第16代大統領リンカーンが戦争直後に暗殺されています。明治新政府をつくった西郷隆盛や大久保利通、坂本龍馬は、ノーベルやリンカーンと同じ時代に生きていたということです。
 スウィフトというアイルランド生まれの人が書いた『ガリバー旅行記』には、ガリバーが冒険の途中、1709年5月に船で日本に立ち寄り、エドで皇帝に拝謁したとあります。もちろん架空のお話ですが、その年の5月、6代将軍家宣が将軍の座に就いています。ガリバーが会った皇帝は家宣ということになります。
 フランスのSF作家ジュール・ヴエルヌが書いた物語『80日間世界一周』には、青年フォグが世界一周の途中1872年に横浜に立ち寄ったとあります。新橋と横浜を結ぶ鉄道(陸蒸気)が開通して間もない頃です。物語の上でも、歴史年表を広げると面白い知識に出会えることが分かります。

【第二時限】鬼頭宏先生(静岡県立大学学長)

 鬼頭先生は、静岡県立大学学長を務められ、歴史人口学を研究されています。授業では、日本の人口問題、人口から読む日本の歴史について教えて頂きました。
 現在の日本では、建設や介護など多くの業種での人手不足を背景に、外国人労働者の受入が国会の争点になっています。日本の総人口は2010年をピークに減少し、最新の人口推計では2100年に6千万人になると予想されています。問題となるのは人口構成の偏りです。15~64歳の生産年齢人口の減少と65歳以上の高齢者の増加は2050年頃まで続き、自治体消滅の可能性などが懸念されています。
 人口転換、すなわち出生率と死亡率の低下によってもたらされる少子高齢化社会の課題は「新しい文明システムへの転換」であると先生は仰っています。人口減少は、現代の日本人にとって経験のないことですが、日本の歴史上、初めてのことではありません。過去の人口推移を見ると、縄文社会(縄文時代)、稲作農耕社会(弥生~鎌倉)、経済社会化した農業社会(室町~幕末)には、何れも後半期に人口が減退しており、文明システムの転換が図られています。明治以降の産業社会も、平成になり人口衰退期に入っており、新しい文明システムの構築が求められているのです。


 次回、12月度の授業は、12月16日(日)(第3日曜日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は岡本彰夫先生(奈良県立大学客員教授、元春日大社権宮司)をお招きします。岡本先生の講義タイトルは、「生まれ変わって来た子の話-勝五郎再生紀聞・お夏組成物語-」です。

2018年10月17日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年10月度の授業

平成30年10月14日(日)に10月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は中国の古典から3つのことばを学びました。一つ目は「虎の威を借る」です。権力のある人、社会的な地位の高い人などの権威を借りて、大きな態度をとる、という意味です。虎に捕まえられたキツネが言葉巧みに虎を説き伏せ、自分のあとをついてくるように言います。虎がキツネの後を歩くと獣たちは恐れて逃げた、という話が中国の古典『戦国策』に出てきます。ギリシャの『イソップものがたり』にも、ライオンの毛皮を着たロバを恐れて人間や獣たちが逃げた、というとてもよく似た話があります。「虎の威を借る」の例として、1906年にドイツで実際に起きた事件のことを教えて頂きました。当時、権威があった陸軍の大尉の制服を着た犯人が、14人の兵隊を集めてベルリン郊外の小さな都市の市役所を占拠し、市の金庫のお金を全て一人で持ち去ってしまったのです。兵隊たちも市長もみんな、大尉の制服にだまされたのでした。
 二つ目のことば「十読は一写に如かず」は、繰り返し十回、本を読むよりも、その内容を書き写すほうが内容が頭に入る、という意味です。三つ目のことばは「一歩は一歩より高し」です。一歩一歩坂をのぼる。前の一歩より、そのあとの一歩のほうが高いところにのぼっている。努力を重ねれば、それだけ進歩する、という意味です。

【第二時限】石川寿一先生(南足柄寺子屋塾代表)

 石川先生は、南足柄寺子屋塾代表を務められ、また経営コンサルタント、写真家、話し方講座講師として多方面で活躍されています。講義では、49年間で巡った世界107地区の”旅”を通じて、経験されたこと、学ばれたことを教えて頂きました。
 27才のときにエディンバラを訪問され、日本が東の端でヨーロッパが真ん中にある世界地図を見て、初めて”極東”の意味を理解できたそうです。また、アイスランドのお土産、小さな地球儀には日本がよく分からず、日本の上にKOREAと印刷されていました。日本は世界第3位の経済大国ですが、ヨーロッパから見た日本は極東の一つの国に過ぎず、私たちの見方と違うということです。
 ”旅”を通じて、自分の目で見ること、現場に身を置くことの大切さを知り、日本の素晴らしさを再発見したり、五感が養われたり、3つの楽しみ(行く前、行った先、行った後で違った楽しみ)があったり、と多くの良さがあることを教えて頂きました。また、イスラム教のラマダン、エジプトの相乗りタクシー、イタリアにある骸骨寺、ケニアのマサイ族など、実際に体験されたエピソードを交え、文化や習慣の違いを紹介して頂きました。これから人生百年時代、まだまだ旅を続けていかれるそうです。


 次回、11月度の授業は、11月11日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は鬼頭宏先生(静岡県立大学学長)をお招きします。鬼頭先生の講義タイトルは、「日本の人口問題を考える-人口から読む日本の歴史-」です。

2018年10月2日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年9月度の授業

平成30年9月9日(日)に9月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は『千字文』について勉強しました。「千字文」とは、子どもたちが字を習うときの教科書です。6世紀の中国・梁の皇帝の命令で、周という先生が選んだ1000の漢字から成り、4字ずつの組み合わせが延々と続く長い詩です。1000の漢字はすべて違った文字で一字も重複していません。
 『千字文』は、朝鮮半島や日本でも漢字の勉強や習字のお手本として使われました。日本には、いつ入ってきたのか、はっきりしていませんが、8世紀に始まる奈良時代にはすでに伝えられていたようです。日本の常用漢字2136字のうち767字が『千字文』に出てきます。
 授業では『千字文』の中から、二つのことばを学びました。「天地玄黄 宇宙洪荒」は「天の色は黒く、地の色は黄色い。空間や時間は広大で、茫漠としている。」という意味で、『千字文』はこの8字から始まります。「宇宙」という言葉がこんな昔からあったということを学びました。もう一つのことば「知過必改 得能莫忘」は「過ちに気づいたら必ず改め、大切なことを学んだら忘れるな。」という意味の教えです。

【第二時限】田嶋享先生(ヤオマサ名誉会長)

 ヤオマサ名誉会長の田嶋先生は、「報徳 九転十起人生塾」の塾長を務められ、地元小田原で「現代版の報徳思想で地域起こしを行う」活動を推進されています。
 これからは「競争」ではなく「共創」の時代であり、小田原の2つの問題を取り上げて、それらに対する取り組みについて紹介して頂きました。一つは、生活保護受給者が増加していることです。ところが受給者の5%は就労できる人々であり、その人たちに働く場を提供することを考えられています。もう一つは、酒匂川の河床がこの20年の間で約2m上昇し、大雨による氾濫のリスクが高まっていることです。地域の人々、企業と協力し河床をきれいにする活動を推進されるそうです。小さなことから始め、実践することの大切さを説かれています。
 報徳の教え「”ありがとう”の反対は”あたりまえ”」「自分がやらねば誰がやる」「譲って損なく奪って益なし」ということばを教えて頂きました。


 次回、10月度の授業は、10月14日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は石川寿一先生(経営コンサルタント・富士フイルムOB・南足柄寺子屋塾代表)をお招きします。石川先生の講義タイトルは、「49年間で巡った世界106か所訪問の旅」です。

2018年8月21日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年8月度の授業 野外活動

 平成30年8月19日(日)、野外活動として「戦後の日本を導いた政治家の生き方を学ぶ」ために大磯町を訪れました。NPO法人大磯ガイド協会の3名の方にガイドして頂き、7~8名のグループ(3グループ、計23名)で大磯のまちを歩きながら、政治家、陸奥宗光、伊藤博文、山縣有朋、西園寺公望、吉田茂について解説して頂きました。また、大磯の歴史とともに、この地にゆかりのある人物、澤田美喜(社会事業家)、松本順(医師)、樋口季一郎(軍人)、西行(僧侶)、島崎藤村(小説家)、ジョサイヤ・コンドル(建築家)について学ぶ機会を得ました。
 大磯まち歩きは、大磯駅→妙大寺→旧島崎藤村邸→澤田美喜記念館→鴫立庵(しぎたつあん)→東海道松並木→城山公園→旧三井別荘→大磯郷土資料館→旧吉田茂邸のルートで巡りました。


 次回、9月度の授業は、9月9日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は田嶋享先生(ヤオマサ名誉会長)をお招きします。田嶋先生の講義タイトルは「現代版の報徳思想で地域起こしを行う」です。

2018年7月16日月曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年8月度の予定

 8月度は野外活動「日本を導いた8人の政治家が暮らした街、大磯にふれる」です。
 ※本應寺での授業はありませんので、ご注意ください。

 日本で最初に海水浴場が開かれた大磯は、明治の頃から沢山の政治家、小説家、詩人等の別荘がありました。地元のガイドさんの解説を聞きながら街なかを散歩してみましょう。
1 集合日時 平成30年8月19日(日)9時30分
2 集合場所 大磯駅前
3 散策コース・スケジュール
 9:30 大磯駅前(避暑地、大磯の概略説明)
 9:45 徒歩約10分、妙大寺(松本順と大磯)
10:00 徒歩約10分、エリザベスサンダースホームへ
      澤田美喜さんの業績に触れる
      (エリザベスサンダースホーム、聖ステパノ学院他)
      澤田美喜記念館訪問
11:00 徒歩約45分、途中、旧島崎藤村邸、鴫立沢、旧東海道松並木
      明治の元勲の別荘跡、松並木を経て城山公園(旧三井別邸)へ
12:30 昼食会場 城山公園(旧三井別邸)、大磯町郷土資料館
13:30 徒歩約10分、旧吉田茂邸へ
14:30 旧吉田邸訪問後、現地にて自由解散
      (徒歩約40分の海岸添いのコース、又は路線バス約5分で大磯駅へ)
4 注意事項
 1)昼食・飲料は各自ご持参ください。
 2)訪問先で必要な入場料等は寺子屋スクールで負担します。
 3)雨天の場合は中止(小雨決行)します。
 4)持ち物は筆記用具とメモ帳等で特別な物は必要ありません。

 参加をご希望の方は、7月末日までに生徒およびご父兄の氏名を、本應寺FAX:0465-27-1050、又は事務局TEL:070-3525-1058までご連絡ください。

2018年7月4日水曜日

小田原寺子屋スクール 特別公開講座

 平成30年7月1日(日)、小田原市生涯学習センターけやきに於いて、小田原市・小田原市教育委員会との共催で第四回特別公開講座を開催いたしました。石塚理事長の挨拶に続いて、お二人の先生にご講演をいただきました。
(1)宮崎 緑  先生(千葉商科大学教授 国際教養学部長)世界を視る目、国際社会の動きの見方
(2)河合 忠彦 先生(筑波大学名誉教授)ソニー・パナソニック・シャープは薄型テレビ・スマホでなぜサムスン・アップルに負けたのか
当日は183名の参加があり、昨年同様、盛況でした。暑い中、小田原市内外、遠方からも多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。


2018年6月14日木曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年6月の授業

平成30年6月10日(日)に6月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は『荀子』と『論語』の中から3つの文章を学びました。そのうちの2つを紹介します。

 ◆是を是と謂い非を非と謂うを直と曰う。 『荀子』の一節

 正しいことを正しいと言い、間違っていることを間違っていると言う。そうした態度、姿勢こそ、正直でまっすぐな道というものです、という意味です。「是々非々」という言葉は、この文章から生まれました。荀子は、よいものはよいと判断できる人を「知者」、そういう判断の出来ない人を「愚者」と言いました。

 ◆人の生くるや直ければなり。これ罔くして生くるは、幸いにして免るるのみと。 『論語』の一節

 人生というものは、もともと、まっすぐで正直なものです。それを無視して曲がった生活をする人が、罰を受けず無事に過ごせたとしたら、それは偶然にそうなっただけなのです、という意味です。
 今、政治家や中央官庁の役人の「ウソ」が問題となっていますが、その人たちは「是を是と謂い非を非と謂う」ことができず「これ罔(な)くして」生きているのではないか、と多くの人が考えています。これまでの授業で、孔子をはじめ古代中国の先人たちの教えが現代に通じることを教えて頂きましたが、今月学んだ2つの言葉も今の日本に通じる教えと言えます。

【第二時限】北岡和義先生(ジャーナリスト、元日本大学教授、元読売新聞記者)

 北岡先生は、読売新聞記者、横路衆議院議員の秘書を務められ、1979年から27年間は米国で、その後は日本でジャーナリストとして活躍されています。授業では、米国という国とその歴史について教えて頂きました。
 米国は1776年に英国から独立しました。自由の女神は、独立運動を支援したフランス人の募金によって贈呈され、自由を求めて世界中からやって来る人々を受け入れてきた米国の象徴でもあります。しかし、現在のトランプ大統領の下では入国規制が行われています。トランプ大統領の対極にあたるのが第44代オバマ大統領です。2008年にシカゴで行われた大統領選の勝利演説では、白人も黒人も人種の壁を越えて初めて白人ではない大統領を選んだことに歓喜の涙を流したそうです。米国で最も偉大な大統領と言われているのは、奴隷解放を行った第16代大統領リンカーンです。1955年、ローザ・パークスはバスの運転手の命令に背き白人に席を譲るのを拒んだために逮捕され、その後、公民権運動が起こります。米国を改革してきたのは、白人ではなくマイノリティの人々であり、米国はWASPの国でなくなる、と先生はおっしゃっています。ロサンゼルスには多くのアジア人が住み、話されている言語は85~100ヶ国語に上ります。
 最後に、米国の貨幣には、LIBERTY、IN GOD WE TRUST、E PLURIBUS UNUM(多様性の統一)の3つの言葉が刻まれていることを教えて頂きました。


 次回、7月度の授業はありません。7月1日(日)13:30~小田原市生涯学習センターけやきホールにて特別公開講座を行います。詳細は、当ホームページの「特別公開講座のお知らせ」をご覧ください。

2018年5月28日月曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年5月度の授業

平成30年5月13日(日)に5月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は荀子について学びました。荀子は、孔子を創始者とする「儒教」を学んだ紀元前3世紀の思想家です。『論語』や『孟子』は、孔子や孟子の弟子たちがまとめたものですが、『荀子』はそのほとんどを荀子本人が書いています。授業では『荀子』から4つの言葉を学びました。そのうちの2つを紹介します。

 ◆青は、これを藍より取りて、しかも藍より青し。氷は、水これをなして、しかも水より寒し。

 青い色は、藍という草からつくりだすが、藍よりも青い。氷は水からできるが、水より冷たい。という意味です。この言葉から生まれた「出藍の誉れ」というフレーズは、弟子が先生の学識や技量を超え、先生を追い越すことを意味します。

 ◆人は博く学びて日に己を参省せばすなわち知は明らかにして行い過ちなし。

 参省は三回省みることです。人間も毎日反省を繰り返して学問に励むなら、英知が増して、まちがった行いをしなくなる、という意味です。色々なことを勉強し、経験を積み重ねていくと、学問も人生も、とても幅が広く奥が深いものだと分かってきます。
 荀子は、これらの言葉を通して「学ぶことの大切さ」を説いています。

【第二時限】和田正宏先生(はじめ塾 第三代塾長)

 和田先生は、85年の歴史を持ち、塾長のご家族と同じ屋根の下で生活する生活寄宿塾、はじめ塾の第三代目塾長を務められています。授業では、はじめ塾の教育実践、「なにもしない教育」について教えて頂きました。
 通常の教育とは、先生、大人、人生の先達が子どもに教え伝えることであり、効率化のために、大多数の人が同じ答えを出すように導きます。それも答えは絶対にあり、創り出したり、見つけ出すものではなく、探し出すもの、導き出すものです。ところが、教育は子どもたちのためのものであり、大人のためのものではありません。
 「なにもしない教育」は、一人一人を大切にし、自立を目指します。自立とは、自分の力(良さ)を発揮して、自分で道を切り拓いていく力をもって人生を歩むことです。そのために大切なことは、自分をよく知ること、例えば自分の好き嫌いを知ることです。色々知らないことを知り、色々やってみることが、自分を知ることにつながります。また、大人にとって大切なことは、子どもが失敗しても大丈夫な環境、関係性を作っていくことです、と教えて頂きました。

 次回、6月度の授業は、6月10日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は北岡和義先生(ジャーナリスト・元日本大学教授 元読売新聞記者)をお招きします。北岡先生の講義タイトルは、「アメリカ生活27年で学んだことー多様な価値観を認めるー」です。

2018年5月27日日曜日

特別公開講座のお知らせ

 平成30年7月1日(日)に特別公開講座を開催いたします。事前の参加申し込みは不要、参加費は無料です。多数の方のご参加をお待ちしています。


2018年4月15日日曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年4月度の授業

第九期がスタートしました。平成30年4月8日(日)に第1回目となる4月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 先月に続き「墨子」の言葉を学びました。今月学んだ二つの言葉のうち「墨子曰く、大国に処りて小国を攻めず(以下略)」で始まる言葉は、「大国であっても小国を攻めない。大氏族(勢力の大きい集団)であっても小氏族(弱い集団)を略奪しない。強い者は弱い者を脅さない。貴族であっても身分の低い人を見下さない。ずる賢い者はバカ正直な者をだまさない。こうしたことが実現できれば、その国を率いる統治者は聖王(すぐれた徳をもち、りっぱな政治をする君主)と呼んでよい。」という意味です。先月学んだ「非攻」と、あらゆる人を敬愛し平等に扱うべきという「兼愛」の大切さを説いています。
 「王公大人、牛羊の財ありて(以下略)」で始まるもう一つの言葉では、王公大人(権力者)が縁故関係、財産、身分、容貌を重んじ、政治の根本が能力ある人材の登用にあることを忘れていると説いています。
 墨子は今から二千数百年前の人ですが、その教えは現代にそのまま通用すると言えます。

【第二時限】窪田哲夫先生(恵那市佐藤一斎「言志四録」普及特命大使・前拓殖大学客員教授)

 授業の冒頭で、人生とは人が活き活きと生きること、人の命には限りがあるが1日の時間は全ての人に平等に与えられていること、今を大切に生きることの大切さを教えて頂きました。
 今回の窪田先生の講義タイトルは、「西郷どん」が愛した佐藤一斎『言志四録』です。西郷隆盛は、かつて島流しにされた時、『言志四録』の1133条を熟読し、その中から101箇条を選んで自分だけの言志録『西郷南洲手抄言志録』を作りました。西郷隆盛の言葉「敬天愛人」は、天を敬い、人を愛するという意味で、自然を大切にする日本人の心を表した言葉、『言志四録』が心の支えとなり生まれた言葉と言えます。授業後半では、『西郷南洲手抄言志録』の中から、いくつかの言葉「志をたてよ、湧泉知るや、志をたてよ」「学は為せ、人に見せるな、臍(へそ)に置け」「静座から、真己をみつめ、自覚せよ」「誠意とは、照り輝く、太陽だ」を学び、『言志四録』について理解を深めました。
 また、以前に学んだ「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め。」を皆で復唱しました。

 次回、5月度の授業は、5月13日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は和田正宏先生(はじめ塾塾長)をお招きします。和田先生の講義タイトルは、「はじめ塾子どもの育ち-3代85年の歴史を持つ寄宿生活塾の教え-」です。場所は、風間会館に変更となります

2018年3月13日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年3月度の授業

平成30年3月11日(日)に3月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は「墨子」について学びました。授業の冒頭で、栗田先生が北朝鮮とアメリカの首脳会談のニュースを紹介されましたが、「戦争」と「平和」の話題は墨子の思想と関連があります。
 墨子は、紀元前5~4世紀頃に実在した人物ですが、生まれた年や死んだ年は分かっていません。名前は翟(てき)と言い、中国古代の思想家としては珍しい技術者で、「墨家」と呼ばれる墨子の思想集団は技術者集団でした。その教えは「非攻」、「兼愛」です。「非攻」とは攻めない、戦争をしないことであり、墨子とその弟子たちは、大国の楚が小国の宋を攻めようとしたとき、宋の危機を救いました。防御戦術に用いる器械類の製造に詳しかった墨家の技術が大いに役立ったそうです。「兼愛」は自他の区別なく、みんなを愛することです。墨子は、人を殺せば不義(正義、道徳に反する行い)だと認める当時の身分の高い人たちが、他国を侵略するという大きな不義を非難しないどころか正義だといって称賛したことを批判しました。
 授業の最後に学んだ「墨守」という言葉は、墨子の守る城が何度攻められても陥落しないことから、自分の思想、信念などを固く守り通すことを意味します。

【第二時限】伏見勝先生(元報知新聞社長)

 伏見先生には、前回2015年10月の授業でテレビや新聞の「報道」、そのあり方について講義をして頂きました。今回は「読書」についてです。昨年、ある大学生の投書が話題となりました。なぜ読書をしないといけないのか?これまで全く読書をしなかったが特に困らなかった、というものです。
 読書について、作家の恩田陸さんは「とにかく本を読んでいないと自分がスカスカになっていく感じがする」、元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎さんは「心が潤うから読む」という言葉で表現されています。本を読むと、自分の世界が広がる、物事を考えるようになる、楽しむことができる、知識が広がる、ということを教えて頂きました。伏見先生は、本を読んでいるうちに自分の腹が座ってくる、何かあっても動じなくなってくる、やっていいことといけないことを自然に覚えるようになる、本は心に栄養を与える、とおっしゃっています。
 『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)の岩波文庫本、『飛ぶ教室』(エーリッヒケストナー著)、『白バラは散らず』(インゲ・ショル著)、『罪と罰』(ドストエフスキー著)、21世紀少年少女世界文学館セットなど、数多くの本を推薦して頂きました。


 次回から第九期がスタートします。4月度の授業は、4月8日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は窪田哲夫先生(恵那市佐藤一斎「言志四録」普及特命大使・前拓殖大学客員教授)をお招きします。窪田先生の講義タイトルは「西郷どんが愛した言葉・佐藤一斎の言志四録(日本人の心)」です。

2018年3月4日日曜日

小田原寺子屋スクール 第九期生徒募集

 みなさんは、どんな夢や希望を持っていますか。将来、どんな人になりたいですか。あなたの夢や希望をかなえるために、学校や学習塾の授業、スポーツクラブでは学ぶことができない大切なことがあります。小田原寺子屋スクールでは、様々な世界で活躍されている先生方からその大切なこととは?について教えていただきます。また、先生方がみなさんと同じ年の頃にどんなことを考え、なぜその道に進もうと思ったのか、どんなことを実行されてきたのかなど、貴重なお話を聴くことができます。
 これまでに、新聞記者、オリンピックの金メダリスト、宇宙の超新星を研究する博士、作家、女優、アナウンサー、画家、実業家、・・・と、多くの先生方に授業をしていただいています。みなさんも月に一度、小田原寺子屋スクールで一緒に学びませんか。
◆受講料:無料

お申込みはこちら↓
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf0rRHeW7uUGu-LG3sj2FBRaQghJ-WT55wMyTHDWqXEUyqFKA/viewform
上記にアクセスできない場合は、氏名(フリガナ)、学年、住所、保護者氏名、連絡先(電話番号)を記載の上、下記メールアドレスへお送りください。
info@terakoya-odawara.com
問い合わせ先 070-3525-1058 寺子屋スクール事務局(川口)


第九期(平成30年4月~平成31年3月)講義予定

◆第1時限 10:00~10:45
 元朝日新聞天声人語コラムニストの栗田亘先生に漢文や物語を解説して頂き、先人の教えを学びます。
◆第2時限 11:00~12:00
 各界で活躍されている先生方に「私の仕事・生き方・みなさんへの期待」などをお話し頂きます。
《平成30年》
 4月 8日 窪田哲夫先生  恵那市佐藤一斎「言志四録」普及特命大使・前拓殖大学客員教授
        「西郷どんが愛した言葉・佐藤一斎の言志四録(日本人の心)」
 5月13日 和田正宏先生  はじめ塾塾長
        「はじめ塾子どもの育ち」 3代85年の歴史を持つ寄宿生活塾の教え
 6月10日 北岡和義先生  ジャーナリスト・元日本大学教授 元読売新聞記者
        「アメリカ生活27年で学んだこと-多様な価値観を認める-」
 7月 1日 第4回小田原寺子屋スクール公開講座  テーマ 「国際政治と経済」
       13:00開場 13:30開演 小田原市生涯学習センターけやき(小田原市役所隣)
       宮崎緑先生   千葉商科大学国際教養学部長
        「世界を視る目、国際社会の動きの見方」
       河合忠彦先生  筑波大学名誉教授
        「ソニー・パナソニック・シャープは薄型テレビ・スマホでなぜサムスン・アップルに負けたのか」
 8月 下旬 大磯旧吉田茂邸見学
 9月 9日 田嶋享先生   ヤオマサ名誉会長
        「現代版の報徳思想で地域起こしを行う」
10月14日 石川寿一先生  経営コンサルタント・富士フイルムOB・南足柄寺子屋塾代表
        「49年間で巡った世界106か所訪問の旅」
11月11日 鬼頭宏先生   静岡県立大学学長
        「日本の人口問題を考える-人口から読む日本の歴史-」
12月16日 岡本彰夫先生  奈良県立大学客員教授・元春日大社権宮司
        「生まれ変わって来た子の話-勝五郎再生紀聞・お夏組成物語-」
《平成31年》
 1月13日 吉川伸治先生  神奈川県内広域水道企業団企業庁・元神奈川県副知事
        「飲水思源-神奈川の水道を考える-」
 2月10日 萩原一夫先生  認定NPO経営支援NPOクラブ理事・元物産キャピタル社長 ドイツ三井物産経理・財務担当
        「ドイツの戦後リーダーとドイツ現代史」
 3月10日 厚地純夫先生  JR東海専務執行役員
        「きっぷの話 新幹線からリニアへ」

2018年2月14日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年2月度の授業

平成30年2月11日(日)に2月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 栗田先生は、一月半ばに仕事で岩手県の陸前高田市を訪問されました。今月は、その時の光景から思い出された中国の詩、言葉について解説して頂きました。陸前高田市は2011年3月の東日本大震災で発生した大津波によって何もかもが流され、7年経った今も土地の造成や道路の建設が続いています。市内には、当時の被害を未来に残すため、いくつかの「震災遺構」があります。海岸沿いに約17万本あった松の中で唯一生き残った「奇跡の一本松」、「気仙中学校」の校舎や5階建ての「旧下宿定住促進住宅」を映像で紹介して頂きました。
 「桑田(そうでん)変じて海と成る」は、中国・唐の時代の詩人、劉希夷の詩「白頭を悲しむ翁に代わって」の一節で、世の中に存在するものは、どれもこれも、いつの間にか衰えていくという意味です。「愚公(ぐこう)山を移す」は、中国の古典『列子』に出てくるエピソードです。昔、黄河の下流の岸辺に二つの高い山があり、その北側のふもとに愚公という老人が住んでいました。その山は人々の通行の妨げになっていたので、愚公は家族全員で山を崩して平らにすることにし、いつ完成するか分からない仕事にこつこつと取り組みました。神様は愚公の努力に感心して二つの山を他の場所に移した、ということです。愚公の「愚」は愚直という意味、「公」は親しみを持つ呼び名であること学びました。

【第二時限】向江隆文先生(元NHK沖縄放送局長)

 向江先生は、2012年から2015年にNHK沖縄放送局長を務められ、現在はNHKグローバルメディアサービスでご活躍中です。授業では、先生が沖縄で撮影された多くの写真を交えながら、沖縄の歴史、3つの悲劇とタイトルにある沖縄のことば、”ぬちどうたから”や”ちむぐくる”について解説して頂きました。
 沖縄の歴史は、1429年に成立した琉球王国の時代に遡ります。当時は中国との交流が盛んで、明の皇帝に朝貢し、琉球王国の国王として認めてもらいました。これを「冊封(さっぽう)」と言います。首里城祭では毎年、冊封の儀式が再現されています。東アジアの中継貿易で栄えた15世紀の大交易時代を経て、1609年、沖縄に最初の悲劇が訪れます。薩摩藩による侵攻です。これ以降、琉球王国は薩摩藩の支配を受けることになります。1879年には、第二の悲劇、琉球処分が明治政府によって行われ、琉球王国は滅亡、沖縄県が設置されました。そして、第三の悲劇1945年の沖縄戦で約20万人が犠牲になりました。当時の沖縄の人々の悲痛な叫びは「根こそぎ動員」「鉄の暴風」「一家全滅」「集団自決」といった言葉に表われています。1952年、日本は主権を回復しましたが、沖縄は1972年に返還されるまでの27年間、米国の施政下に置かれ、今も米軍機の事故や米軍人や軍属による事件、基地の移設問題など様々な問題を抱えています。
 ”ぬちどうたから”は命を大切に、”ちむぐくる”は家族や地域をはじめヨコのつながりを大切にする沖縄の人の温かいこころ、気持ちを意味する言葉で、沖縄の歴史と深い関係があることを教えて頂きました。

 次回、3月度の授業は、3月11日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は伏見勝先生(元報知新聞社長)をお招きします。伏見先生の講義タイトルは「強い大人になるーそのための読書・・・ー」です。

2018年1月30日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年1月度の授業

平成30年1月14日(日)に1月度の授業を行いました。

 1月初、発足当初から小田原寺子屋スクールを支えて来られた岩堀道夫さんがお亡くなりになり、授業のはじめに皆で黙とうを捧げました。心よりご冥福をお祈りいたします。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は「ともだち」に関することばを学びました。「知己(ちき)」は、自分の気持ちや考えをよく理解してくれる人、親友です。「知音(ちいん)」は、心の底を打ち明けて話すことのできる友、心の通じ合った親友、無二の友のことで、中国の古典『列記』に記された、伯牙(はくが)と呼ばれる琴の名人とその友人の鐘子期(しょうしき)のエピソードがもとになっています。鐘子期は、伯牙が奏でる琴の音を巧みに聞き分けることができたそうです。「竹馬(ちくば)の友」は、幼いとき一緒に竹馬遊びをした友だち、おさなともだちのことです。劇作家の久保田万太郎は、おさなともだちのことを懐かしく思い、「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」という俳句を詠んだことや、『論語』には「朋あり遠方より来たる、亦た楽しからずや」という孔子のことばがあることも教えていただきました。
 友人との別れの光景を詠った「酒を勧む」は、9世紀の詩人、于武陵(うぶりょう)の詩で、日本の井伏鱒二によって「コノサカヅキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ ハナニアラシノタトヘモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ」と訳されています。

※先月の授業で学んだ「曲阜(きょくふ)」の「阜」という文字について
 もとは、天に昇るはしごを示す象形文字で、高いところ、丘という意味があります。

【第二時限】柴田秋雄先生(元JR連合事務局長)

 柴田先生は、国鉄(現JR)に入社され、1992年から日本鉄道労働組合連合会(JR連合)の事務局長、2000年から2010年までホテルアソシア名古屋ターミナルホテルの総支配人を務められました。授業では「日本一幸せな従業員をつくる!」と題して、ホテルの総支配人をされていたときのことを話して頂きました。これまで数万人を対象に全国約200か所で講演され、今は思うように声が出ず不自由されていますが、精力的に活動を続けられています。
 ホテルの売上が減少していた2000年当時、柴田先生は従業員が毎日喜んで働けるホテルを目指し、新たな設備ではなく「人」に投資することを決断され、人を大切にする新しい社是を定め、従業員の共通の認識としました。同年9月に名古屋を集中豪雨が襲った時には、鉄道が止まり、駅で帰宅できず立ち往生していた人々のためにホテルを開放し、従業員の心温まるもてなしが話題となりました。その後、ホテルは黒字に転換、2003年の年間稼働率は名古屋市内で1位となったそうです。2010年にホテルがなくなるまで、自分の仕事は従業員を幸せにすることという信念のもと、従業員ひとりひとりを大切にし、上司が部下の心の支えとなることに力を注がれたそうです。
 生徒からの質問に対し、自分のことよりも相手を大切にするのが「人」である、とおっしゃっていました。

 次回、2月度の授業は、2月11日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は向江隆文先生(元NHK沖縄放送局長)をお招きします。向江先生の講義タイトルは「沖縄の歴史から”ぬちどうたから”(命が宝)と”ちむくぐる”(肝心)」です。