2017年10月14日土曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年10月度の授業

平成29年10月9日(月)に10月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、中国の古い時代の詩「漢詩」について学びました。漢詩は、一つの行が四つ、五つまたは七つの言葉で組み立てられることが多く、一、二、四行の終わりには同じ響きの音を繰り返す「脚韻」というルールがあります。授業では、唐の時代の代表的な詩人、李白、杜甫、孟浩然が詠んだ詩を一つずつ学び、脚韻の具体例とともに漢詩を優れた日本語に訳した小説家、井伏鱒二の作品について解説して頂きました。
 ◆「静夜思」 牀前看月光 疑是地上霜 挙頭望山月 低頭思故郷
は李白の詩で、光(kou)、霜(sou)、郷(kyou)が脚韻です。この詩を井伏鱒二は「ねま(寝間)のうちからふと気がつけば 霜かとおもう(思う)いい月あかり のきば(軒端)の月をみる(見る)につけ ざいしょ(在所)のことが気にかかる」と訳しています。寝間は寝室、在所はいなか(ふるさと)を意味します。さらに、杜甫の詩「復愁」、孟浩然の詩「春暁」についても、井伏鱒二の訳があることを学び、その作品を鑑賞しました。
 ◆「復愁」 万国尚戎馬 故園今若何 昔帰相識少 早已戦場多
 ◆「春暁」 春眠不覚暁 処処聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少

【第二時限】露木伸宏先生(国土交通政策研究所長、元海上保安庁総務部参事官)

 露木先生は、大学卒業後に運輸省(現在の国土交通省)に入省され、海上保安庁をはじめ国内や海外でご活躍されてきました。今回「わが国の海 知る、守る、広げる」と題し、同庁の仕事について教えて頂きました。「海を知る」では、海上保安庁の担当する海域が、海岸(基線)から12海里(約22km)までの領海と、200海里(約370km)までの排他的経済水域を合わせた約447万km2(日本の領土面積の約12倍)と広大であることを学びました。「海を守る」仕事は、尖閣諸島周辺の領海に侵入する中国船に対し巡視船艇や航空機で行う警告や退去要求、海上犯罪の取締り、海難救助、海洋環境保全、東日本大震災での被災者救出や物資輸送、港湾の復旧など、多岐にわたることを知りました。「海を広げる」では、排他的経済水域の外に広がる延長大陸棚と海底の天然資源開発や探査、小笠原諸島の西之島噴火を例に拡大する海域、船の安全のため、また日本の海域であることを根拠づけるために重要かつ不可欠な海図作成の仕事について解説して頂きました。
 最後に、日頃から世の中で起きていることに興味を持ち、読書やニュースを通して知識を身に付け、世の中の仕組みやルールを理解することが大切です、というメッセージで授業を締めくくられました。


 次回、平成29年11月度の授業は、11月12日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は田中和雄先生(出版社童話屋代表)をお招きします。田中先生の講義タイトルは、「子どものころから本屋になりたかった」です。