2017年12月22日金曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年12月度の授業

平成29年12月17日(日)に12月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、孔子の一生についてさらに理解を深め、『論語』の中から新たに3つの文章を学びました。孔子は魯の国の曲阜(きょくふ)という街に生まれました。母は宗教者で、当時の宗教者は「儒」と呼ばれていました。孔子がのちに完成した儒教の「儒」という字は、母の一族の一字を取ったと考えられています。30歳のころには、優れた学者として認められ、弟子も増えてそのお礼で生活できるようになりました。孔子先生の授業内容は「詩・書・礼・楽」が中心で「詩」は現代の詩と同じ、「書」は歴史の記録、「礼」は儀式の作法、「楽」は音楽です。『詩経』はその頃読まれていた詩を集めた書物、歴史の記録はのちに集められて『書経』という書物になりました。また、孔子には音楽の才能もあったそうです。
 最後に、今月学んだ『論語』の文章の中から、栗田先生がとても重要です、とおっしゃっていた一つを紹介します。

 子曰く、学んで思わざれば則ち罔(くら)し。思うて学ばざれば則ち殆(あやう)し。

「先生は言われた。書物や先生から学ぶだけで自分で考えないと、混乱するばかりだ。考えるだけで自分で学ばないと、不安定だ。」という意味です。

【第二時限】朝比奈豊先生(毎日新聞社会長)

 朝比奈先生は1971年に毎日新聞社に入社され、以来、記者、経営者として活躍されてきました。授業では「東日本大震災と高校野球」と題して、2011年に春の選抜高校野球大会会長を務められたときのことを話して頂きました。大会開幕を12日後に控えた同年3月11日、東日本大震災が発生し、先生は大会を開催すべきか否かの大きな決断を迫られることになります。今年は大会を中止すべきとの電話やメールが殺到する中、甲子園を夢見て練習してきた選手たちにとっては一生に一度のチャンスになるかもしれないと、とても悩まれたそうです。出場校が甲子園入りする中、被災された地元の人たちのためにボランティア活動を続けていた宮城県の東北高校の選手たちのことを聞き、開幕5日前に招集された臨時の特別理事会では全員意見を出し合って議論を尽くし、ついに開催を決断されました。
 3月23日の開会式で岡山・創志学園高校の野山主将が行った選手宣誓は、選手自身が考えた言葉だったそうです。「宣誓。私たちは16年前、阪神淡路大震災の年に生まれました。今、東日本大震災で多くの尊い命が奪われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです。被災地では、全ての方々が一丸となり、仲間とともに頑張っておられます。人は仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越えることができると信じています。私たちに今できること。それはこの大会を精いっぱい元気を出して戦うことです。がんばろう!日本。生かされている命に感謝し、全身全霊で、正々堂々とプレーすることを誓います。」
 優勝した東海大相模高校の佐藤主将は、決勝戦の後、「開催してくれた高野連の方々、開催を許してくれた被災地の方々に感謝の気持ちを持って...」と語りました。
 最後に大会歌「今ありて」を聴かせて頂き、数々のエピソードとともに感動を伝えて頂きました。

 次回、平成30年1月度の授業は、1月14日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は柴田秋雄先生(元JR連合事務局長)をお招きします。柴田先生の講義タイトルは「より幸せな従業員をつくる」です。

2017年11月14日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年11月度の授業

平成29年11月12日(日)に11月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、詩に関係する古代中国の言葉を二つ学びました。一つ目は「他山の石」です。
 ◆他山の石、以って玉を攻(みが)くべし   『詩経』から
は、「ほかの人の行いを参考にして、自分を反省し、向上に努めなさい。」という意味です。もともとの意味は「他国で産出した質の悪い石であっても、砥石として使えば、自分の持っている宝玉を磨くことができる。」です。「あなたを他山の石として努力します」という人がいますが、これは大変な間違いで「他山の石」とは真似してはいけない手本のことです。
 二つ目は「守株(しゅしゅ)」です。
 ◆株を守って兎を待つ  『韓非子』から
は、「いつまでも古い習慣を守るばかりで進歩がないこと。」という意味です。ある男が畑を耕していたとき、ウサギが飛び出してきて、畑の中の株にぶつかって死んでしまいました。男はウサギを料理して楽しみ、それからは畑仕事をやめて、またウサギを手に入れようと毎日株を見張っていました。しかし、ウサギはそれきりで、男はみんなの笑いものになった、というたとえ話からこの言葉が生まれました。北原白秋の詩を山田耕筰が作曲した「待ちぼうけ」は、「守株」をそのまま借りた歌であることを教えて頂きました。「待ちぼうけ」は、もともとの意味と違って「怠けるな、せっせと働け」という意味です。
 このように、古代中国の詩や言葉が、生まれた当時と異なる意味を持ち、今の日本で使われていることを学びました。

【第二時限目】田中和雄先生(出版社童話屋代表)

 田中先生は、1977年、渋谷に童話屋書店を開き、1980年には本の出版を始められました。現在、童話屋の代表を務められるとともに、ボランティアで日本全国の学校をまわり、国語の授業で子供たちに詩を教えられています。
 子供の頃から本が大好きで、大人になったら本屋になりたかったそうです。戦後の神田で、みかん箱の上に本が並べられた古本屋に通い、「ファーブル昆虫記」や「イワンのバカ」など、岩波文庫の本を夢中で読まれたそうです。40代になって広告会社を辞め、本屋の夢を叶えられました。谷川俊太郎さんと店の中で始められた朗読の集い、安野光雅さんと「魔法使いのABC」を初めて出版されたこと、工藤直子さんとの交流から生まれた「のはらうた」など、本を通して多くの人と出会い、色々な仕事を経験されてきました。また、1978年、イトーヨーカドーの中に初めてオープンした「子ども図書館」は、田中先生のアイデアから生まれ、2009年の閉館に至るまで、31年間で延べ16館できました。
 授業の最後に、童話は「真実のお話」であるというトルストイの言葉通り、これからも本当のことを語り続けていきたい、とおっしゃっていました。


 次回、平成29年12月度の授業は、12月17日(日)(於:風間ビル)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は朝比奈豊先生(毎日新聞会長)をお招きします。朝比奈先生の講義タイトルは、「新聞論」です。

2017年10月14日土曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年10月度の授業

平成29年10月9日(月)に10月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、中国の古い時代の詩「漢詩」について学びました。漢詩は、一つの行が四つ、五つまたは七つの言葉で組み立てられることが多く、一、二、四行の終わりには同じ響きの音を繰り返す「脚韻」というルールがあります。授業では、唐の時代の代表的な詩人、李白、杜甫、孟浩然が詠んだ詩を一つずつ学び、脚韻の具体例とともに漢詩を優れた日本語に訳した小説家、井伏鱒二の作品について解説して頂きました。
 ◆「静夜思」 牀前看月光 疑是地上霜 挙頭望山月 低頭思故郷
は李白の詩で、光(kou)、霜(sou)、郷(kyou)が脚韻です。この詩を井伏鱒二は「ねま(寝間)のうちからふと気がつけば 霜かとおもう(思う)いい月あかり のきば(軒端)の月をみる(見る)につけ ざいしょ(在所)のことが気にかかる」と訳しています。寝間は寝室、在所はいなか(ふるさと)を意味します。さらに、杜甫の詩「復愁」、孟浩然の詩「春暁」についても、井伏鱒二の訳があることを学び、その作品を鑑賞しました。
 ◆「復愁」 万国尚戎馬 故園今若何 昔帰相識少 早已戦場多
 ◆「春暁」 春眠不覚暁 処処聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少

【第二時限】露木伸宏先生(国土交通政策研究所長、元海上保安庁総務部参事官)

 露木先生は、大学卒業後に運輸省(現在の国土交通省)に入省され、海上保安庁をはじめ国内や海外でご活躍されてきました。今回「わが国の海 知る、守る、広げる」と題し、同庁の仕事について教えて頂きました。「海を知る」では、海上保安庁の担当する海域が、海岸(基線)から12海里(約22km)までの領海と、200海里(約370km)までの排他的経済水域を合わせた約447万km2(日本の領土面積の約12倍)と広大であることを学びました。「海を守る」仕事は、尖閣諸島周辺の領海に侵入する中国船に対し巡視船艇や航空機で行う警告や退去要求、海上犯罪の取締り、海難救助、海洋環境保全、東日本大震災での被災者救出や物資輸送、港湾の復旧など、多岐にわたることを知りました。「海を広げる」では、排他的経済水域の外に広がる延長大陸棚と海底の天然資源開発や探査、小笠原諸島の西之島噴火を例に拡大する海域、船の安全のため、また日本の海域であることを根拠づけるために重要かつ不可欠な海図作成の仕事について解説して頂きました。
 最後に、日頃から世の中で起きていることに興味を持ち、読書やニュースを通して知識を身に付け、世の中の仕組みやルールを理解することが大切です、というメッセージで授業を締めくくられました。


 次回、平成29年11月度の授業は、11月12日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は田中和雄先生(出版社童話屋代表)をお招きします。田中先生の講義タイトルは、「子どものころから本屋になりたかった」です。

2017年9月30日土曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年9月度の授業

平成29年9月10日(日)に9月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、孔子について理解を深め、『論語』の中から孔子の一生と関連のある言葉を2つ学びました。孔子は紀元前550年に魯の国に生まれ、73歳で亡くなりました。孔子という呼び名は「孔先生」という意味で、姓は「孔」、名前は「丘」と言います。孔子の父は農民、母の一族は祈りや占いをする宗教者で、幼い頃、母の一族と暮らしたときに読み書きを学んだと思われ、「吾、少き(わかき)とき賤し(いやし)、故に鄙事(ひじ)に多能なり」という『論語』の一節は、少年時代、貧しかった孔子が生活のためにはどんな仕事でもしたので、いまでも多くのことができる、という意味です。
 また、「子曰、吾十有五而志于学。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳従。七十従心所欲、不踰矩。」は、孔子が70歳を迎えた頃の言葉で、その意味と孔子が歩んできた一生について詳しく解説していただきました。なお、日本で70歳を表す言葉として一般に用いられる「古稀」は、唐代の大詩人、杜甫の一節「人生七十古来稀なり」が原典ということも学びました。

【第二時限】小松由佳先生(フォトグラファー)

 小松先生は、今年6月の公開講座で「K2への登頂」と題して、ご講演を頂きました。現在フォトグラファーとしてご活躍中です。授業では、シリア人でご主人のレドワンさんと共に、シリアの今と難民について、スライドや写真を交えながら解説して頂きました。シリアは今から40年程前にアサド大統領によって支配され、独裁政治の下、失業率が増加、市民の不満が高まっていきました。2011年に多くの市民が人権と自由を求めて立ち上がり、民主化運動へと発展しました。アサド政権は軍隊や警察の武力によって人々を制圧しようとし、武装した市民との間で内戦が勃発、内戦は今も続いています。
 内戦前のシリアはとても美しく、人々は家族や友人と過ごす憩いの時間(アラビア語でラーハ)を大切に暮らしていたそうです。ところが、内戦によって家族や友人、家を失い、難民として国外へ逃げなければならなくなりました。現在、難民は550万人にのぼり、約200万人の子供たちが教育を受けられずにいます。現在のシリアの人々、そして小松先生とご主人の願いは、何よりも内戦の終結であり、また難民への多くの支援が求められていることを教えて頂きました。


 次回、平成29年10月度の授業は、10月9日(月)(体育の日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は露木伸宏先生(運輸施設整備支援機構理事)をお招きします。露木先生の講義タイトルは「わが国の海 知る 守る 広げる」(注目を浴びる海上保安庁の話)です。

2017年8月29日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年8月度の授業

 平成29年8月27日(日)、小田原市栢山にある尊徳記念館を訪れ、解説員の小林輝夫先生から二宮金次郎について多くのことを教えて頂きました。
 午前の部では、講義の後、アニメ「二宮金次郎」を見たり、記念館の展示室や隣接する生家を見学しながら、金次郎の教えや一生について学びました。午後の部では、酒匂川や尊徳記念館周辺の遺跡を約1時間半かけてめぐり、自然と触れ合いながら、地理や歴史、金次郎にまつわるエピソードなど、様々な角度から幅広く解説して頂きました。


 次回、平成29年9月度の授業は、9月10日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は小松由佳先生(フォトグラファー)をお招きします。小松先生の講義タイトルは、「難民として今を生きる-ふるさとを失ったシリア難民-」です。

2017年7月21日金曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年8月度の予定

8月度は「二宮尊徳遺跡めぐり」です。 ※本應寺での授業はありませんのでご注意ください。
1 実施日 平成29年8月27日(日)10:00~14:30 小雨天決行 
2 集合解散場所 小田原市尊徳記念館(10:00までに集合)
3 見学場所・日程

4 講師 尊徳記念館解説員 小林輝夫先生
5 参加料 無料
6 持ち物 ◇弁当(近くにコンビニもあります)◇飲み物 ◇筆記道具 
7 募集締切 8月21日(月)までにFAXにて
8 申込方法 氏名、学年、住所、連絡先、保護者氏名、保護者参加の有無 を明記の上
       箱根板橋 本應寺へFAX:0465-27-1050
9 その他
  ◇全行程徒歩です。歩きやすい靴をご用意ください。
  ◇熱中症対策のため、飲み物をご用意ください。帽子も忘れずに。
  ◇荒天等で中止する場合は、当日午前7時頃までに参加者に連絡します。
  ◇申し込まれた方で、欠席の方は必ずご連絡ください。
   小田原寺子屋スクール事務局 携帯電話:070-3525-1058(川口)


2017年7月19日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年7月度の授業

平成29年7月9日(日)に7月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は「春秋に富む」という言葉を学びました。この言葉は中国の大歴史家、司馬遷が書いた『史記』が出典で、年が若く将来があるというプラスの意味です。ただし、もともとは、年が若く経験が乏しいというマイナスの意味で使われていました。漢の時代に劉邦と呂后の間に生まれた惠帝という幼い皇帝を指して使われた言葉であること、呂后という女性はとても残忍で、中国三大悪女の一人と言われていることを学びました。
 若い人を指す「春秋に富む」に関連して、自分の年を3で割った数字が人生の時間であるという年齢の計算式や「不惑」という言葉について教えて頂きました。例えば、20歳は20÷3=6と3分の2で、午前6時40分にあたり、朝を迎えてエネルギーが満ち満ちている時刻。40歳は40÷3=13と3分の1で、午後1時20分。会社員ならお昼を過ぎてもうひと仕事といった頃合いです。「不惑」は現在でもよく使われ、『論語』では、40歳を「不惑」つまり、もう迷わない年齢としています。

【第二時限】鈴木洋嗣先生(ノンフィクション編集局、編集総務局担当 執行役員)

 鈴木先生は週刊文春編集長、月刊文芸春秋編集長を経験されました。決まりきった仕事ではなく、どこでも出かけて行き、取材できる仕事をしたいと考え、出版社の文芸春秋社に入社されました。入社早々にエジプトへ一週間、帰国してすぐに北海道へ取材で飛んだこともあったそうです。
 授業では「週刊文春」ができるまでの過程と編集部の仕事について教えて頂きました。毎週木曜日に発売される「週刊文春」の記者の仕事は、前週の木曜日ネタ出しの会議に始まります。金、土曜日で取材、日曜日にはタイトルを決め、月曜日に取材のまとめ、月曜の夜から火曜日の朝まで徹夜で原稿を書き上げます。原稿は火曜日にデスク、編集長がチェックし、夜に締め切られ、水曜日中に印刷、製本されて店頭へと配送されます。
 スクープはリークから、人は信用した人にしゃべる、記者にとって大切なことは信用してもらうこと、記者は読者の代理人、読者目線で聞きたいことを聞きに行くことが仕事、リスクを恐れず最後まで取材を尽くすことなど、私たちが日常知ることのできない貴重なお話を伺うことができました。

2017年7月11日火曜日

小田原寺子屋スクール 特別公開講座

 平成29年6月25日(日)、小田原市生涯学習センターけやきにて、今年で第三回目となる特別公開講座を開催いたしました。昨年と同様、小田原市生涯学習推進員の会のご協力のもと小田原市教育委員会との共催で行いました。石塚理事長の挨拶に続いて、下記の3名の先生方にご講演をいただきました。
(1)栗田 亘 先生(元朝日新聞天声人語コラムニスト) 国語辞典を引く、国語辞典を読む
(2)森 武生 先生(都立駒込病院名誉院長) どうして医者になったの?
                       -世界に冠たる外科医になる、初心を貫いた医師のお話-
(3)小松 由佳 先生(フォトグラファー) K2への登頂-情熱が可能性を生み出す-
当日は、昨年度の二倍近い251名の参加があり、大変盛況でした。小田原市内外、遠方からも多くの方にご参加いただきました。ありがとうございました。


2017年7月5日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年6月度の授業

平成29年6月11日(日)に6月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、昔々の中国で生まれ、現代でもよく使われている二つの言葉を学びました。「衣食足りて礼節を知る」は、孔子よりも百年ほど前に活躍した政治家で、斉という国の総理大臣だった管仲の言葉です。生活が安定すれば、人間は礼儀や節度をわきまえるようになる、という意味です。「天網恢恢、疎にして漏らさず」は、6世紀に書かれた歴史書『魏書』に、老子の言葉として出てきます。天が張る網はとても広くて、しかも網の目は粗いから人間の目には見えず、何の役目もしないようでありながら、実は決して悪いことをした人を逃すことはない、という意味です。
 現代では、必ずしもこの二つの言葉通りと言えないこともありそうです。だからと言って、二つの言葉に意味がないということではありません。現代は、管仲の時代に比べれば衣食住が足りているはずなのに、なぜ礼節をわきまえないことがあるのでしょうか?悪事は、今すぐでなくとも後から分かることもあります。大切なことは、先人の言葉を学んだ上で、現代に通用するかどうかを考えてみることです、ということを教えて頂きました。

【第二時限】牧野義司先生(メディアオフィス時代刺激人代表)

 牧野先生は、毎日新聞社に20年、英国ロイター通信社に15年勤められた後、現在も生涯現役の経済ジャーナリストとして活躍されています。授業では、先行き不透明で混迷の時代を迎えた今、先を見通すために大切なことについて解説して頂きました。
 英国のEU離脱や米国大統領選では、日本や欧米のジャーナリストが「読み」を誤ってしまったこと、その原因は現場取材を怠ったことにあったと分析され、ジャーナリストは、今のような混迷の時代こそ、しっかりとした現場取材を通じて、先行きを見通す情勢判断力を持つこと、行動するための座標軸をしっかり持つことだと強調されました。同時に、ジャーナリストだけでなくこれから世の中で活躍する若者たちも「旺盛なる問題意識に裏付けられた好奇心」「フットワークのよさ」「ネアカコミュニケーション力」の3つを持つこと、そして現場に軸足を置きしっかりとした問題意識で社会に役立つ活動を行えば、地域社会だけでなく日本、そして世界を元気にしていくことにつながると教えて頂きました。

 次回、平成29年7月度の授業は、7月9日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は鈴木洋嗣先生(文芸春秋社編集局長)をお招きします。鈴木先生の講義タイトルは、「『週刊文春』の出来るまで」です。

2017年5月21日日曜日

特別公開講座のお知らせ

 来る平成29年6月25日(日)に特別公開講座を開催いたします。事前の参加申し込みは不要、参加費は無料です。多数の方のご参加をお待ちしております。


2017年5月19日金曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年5月度の授業

平成29年5月14日(日)に5月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月のテーマは「見方を変える」です。授業の始めに、私たちが普段目にすることのない日本地図を見せて頂きました。この地図は富山県庁が作成したもので、日本海を中心にして下方にロシア、中国、朝鮮半島、上方に太平洋が描かれています。同じ日本地図でも、どんな角度から見るかによって違って見えることがあるということを理解することができます。
 「蝸牛角上何事をか争う」は、白居易の詩の中のことばで、「蝸牛」すなわち「カタツムリ」の角のような小さい世界で何を争っているのか、という意味です。このことばのもとになっているのは、中国・戦国時代の思想家、荘子や弟子たちのの著作『荘子』に出てくるたとえ話です。戦国時代に魏の国と斉の国との間で条約が結ばれましたが、魏がこの条約を一方的に破ったために、斉の王が激怒し、魏の王を暗殺するか、大軍を差し向けて攻撃するかという話になりました。そのとき、一人の賢者が、2つの国は宇宙の彼方から見ればカタツムリの角の上にあるような小さな存在に過ぎないことにたとえて斉の王を諭しました。「見方を変える」ことの教えを、白居易のことばや荘子のたとえ話からも学びました。

【第二時限】加藤憲一先生(小田原市長)

 講義タイトルは「いのちを守り育てる地域自給圏を目指して」です。授業の前半で、その背景となったご自身の体験、理想の地域イメージ、いのちを支える上で必要なものについて教えて頂きました。子どもの頃の山での生活、3つの震災(阪神淡路、中越、東日本)、農・林・漁の暮らしを通じて、自分の手で、自分の力で生活することを体験されたことがきっかけとなり、映画『風の谷のナウシカ』に出てくる「風の谷」のように「水が巡り、森が茂り、大地は豊穣で、人々は朗らかに支え合い分かち合う」そんな理想の地域をイメージされているそうです。内橋克人氏、宇沢弘文氏、神野直彦氏の3人の識者のことば、著書の内容に触れ、いのちを支える上で必要なものが、空気、水、食、エネルギー、住まい、ケア(医)、教育、ものづくり(とりわけ一次産業)であることを学びました。授業の後半では、人口30万人前後を一つの単位とする「地域圏」、自然環境や立地条件に恵まれた「小田原」、持続可能な地域社会を目指し市で取り組まれていることについて解説して頂きました。

 次回、平成29年6月度の授業は、6月11日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は牧野義司先生(メディアオフィス時代刺激人代表)をお招きします。牧野先生の講義タイトルは、「混迷の時代にはジャーナリストが面白い」です。

2017年4月11日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年4月度の授業

新学期がスタートしました。第八期生を迎え、平成29年4月9日(日)に4月度の授業を行いました。

【第一時限】 栗田亘先生

 今月は、授業始めに、現在シリアで起きている内戦について学びました。シリアでは政府軍と反政府軍が衝突し、化学兵器の使用を巡ってアメリカのトランプ大統領がアサド政権の空軍基地をミサイルで攻撃したと発表したことやトランプ大統領と会談した中国の習近平国家主席は中立の立場をとり、日本の安倍首相はアメリカを支持すると表明したことなど、世界の情勢について解説していただきました。
 続いて、戦争に関係がある中国の言葉を2つ学びました。「春秋に義戦なし。」という『孟子』に出てくる言葉は、戦争のなかで「正義」という言葉が当てはまる戦争は一つもないという意味です。また、「百戦百勝は善の善なる者に非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。」は、百回戦って百回勝つことが最上の勝利ではなく、戦わずして相手を屈服させることこそ最上の勝利であるという孫子の教えです。孫子の言葉を集めた『孫子』には、兵法(戦争のやり方)に関する教えが記され、『孫子』がナポレオンの愛読書であったことを教えていただきました。冒頭のシリアの戦争で多くの人々が犠牲になっていることを考えると、孟子や孫子の言葉が現代にも通じる教えであることが改めて分かります。

【第二時限】 窪田哲夫先生(拓殖大学客員教授)

 今年一月の授業に続いて、佐藤一斎の『言志四録』の言葉1133条の中から数箇条を取り上げて教えていただきました。窪田先生が最も好まれている「已むを得ざるにせまりて、しかる後にこれを外に発する者は花なり。」という言葉は、秋に葉を落とし、冬に根っこが幹に栄養を送り、春にやむにやまれなくなって、花がつぼみを破って咲くように、人の内側から自然と外に満ちあふれ出るようなものの美しさと強さを表しています。
 神様(天)はいつもあなたを見ている、堂々とできることをやろうという教えや、昨日は今日のために、今日は明日のために、歴史の中から未来のヒント見つけようという教えを学びました。また、終わったことはいつまでもひきずらず、失敗や間違いに気づいたらすぐに改めようという意味の「昨の非を悔ゆる者は之れ有り、今の過ちを改むる者は鮮なし。」という言葉も教えていただきました。
 授業の最後に、ヘレンケラーに影響を与えた日本人、「群書類従」という本で日本の1500年の歴史に残すべき書籍を666巻にまとめた「塙保己一」、4万人の子供たちにキャンプを通じて自然の中でどう生きていくかを教えた「小野田寛郎」について解説していただき、日本人の誇り、素晴らしさを学びました。


 次回、平成29年5月度の授業は、5月14日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は加藤憲一先生(小田原市長)をお招きします。加藤先生の講義タイトルは、「命を守り育てる地域自給圏」です。

2017年3月15日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年3月度の授業

平成29年3月12日(日)に3月度の授業を行いました。

【第一時限】 栗田亘先生

 今月は、江戸時代の川柳「おっかさん また越すのかと 孟子言い」と、落語「厩火事」について解説して頂き、幕末期に庶民の間で川柳や落語が好まれた背景には、寺子屋の普及と識字率の高さがあったことを学びました。
 「おっかさん また越すのかと 孟子言い」は、前回の授業で学んだ「孟母三遷の教え」を題材にした川柳です。「厩(うまや)火事」は「厩焚けたり。子、朝より退きて曰く、人を傷なえりやと。馬を問わず。」という『論語』を題材にした落語です。川柳を読んだり落語を理解するためには、文字が読めなければなりません。幕末期の江戸の識字率は70~80%、江戸の中心部では90%と言われています。識字率とは、文字の読み書きができる人の割合です。現代の全世界の識字率は75%であり、当時の識字率がとても高かったことが分かります。また、人々が読み書きを学んだ江戸時代の寺子屋は16560もあったそうです。現代の日本の小学校の数は22000です。
 栗田先生は、江戸時代が平和な時代であり、人々が学問を大事にしていたことや、日本の国土が比較的小さいことが寺子屋が普及した理由なのでは、と考えられているそうです。

【第二時限】藤原勇彦先生(ジャーナリスト・元朝日新聞記者)

 藤原先生は、長野県軽井沢町の森の中に住んでいます。軽井沢町では熊やサルが頻繁に目撃され人と隣り合わせで暮らしていますが、それは森が豊かな証拠とも考えられます。
 森の起源はデボン紀に遡り、現代の森は白亜紀の後にできたもので、そこで樹上生活を始めた哺乳類がサルでした。食料が豊かで平穏な森の生活の中で、サルは原初的な「個性」と「文化」を形作り、進化の過程でそれを受け継いだ人は、文化の力で地球全体に広がっていきました。今から約1万年前、文明が始まり人の力は森の在り方を左右するまでになりました。青銅器と陶器の製造のため木を伐りつくした古代ギリシャ文明がその一例です。それでも現在まで、森は私たちと密接な関係にあり、人間の感性の源であることを学びました。
 授業の後半では、現代の世界や日本の森の状況、林業が森を若返らせる仕事であること、小田原の近辺にある真鶴御林、函南原生林について紹介して頂きました。「ぜひ、森に入ってみてください」が先生からのメッセージです。

 次回、平成29年4月9日(日)は、第八期の最初の授業になります。第一時限は栗田亘先生、第二時限は窪田哲夫先生(拓殖大学客員教授)をお招きします。窪田先生の講義タイトルは、「日本人の心、佐藤一斎『言志四録』(大切な言葉)」です。

2017年2月28日火曜日

小田原寺子屋スクール 第八期生徒募集

 みなさんは、どんな夢や希望を持っていますか。将来、どんな人になりたいですか。あなたの夢や希望をかなえるために、学校や学習塾の授業、スポーツクラブでは学ぶことができない大切なことがあります。小田原寺子屋スクールでは、様々な世界で活躍されている先生方からその大切なこととは?について教えていただきます。また、先生方がみなさんと同じ年の頃にどんなことを考え、なぜその道に進もうと思ったのか、どんなことを実行されてきたのかなど、貴重なお話を聴くことができます。
 これまでに、新聞記者、オリンピックの金メダリスト、宇宙の超新星を研究する博士、作家、女優、アナウンサー、画家、実業家、・・・と、多くの先生方に授業をしていただいています。みなさんも月に一度、小田原寺子屋スクールで一緒に学びませんか。
◆受講料:無料

お申込みはこちら↓
上記にアクセスできない場合は、氏名(フリガナ)、学年、住所、保護者氏名、連絡先(電話番号)を記載の上、下記メールアドレスへお送りください。
問い合わせ先 070-3525-1058 寺子屋スクール事務局(川口)


第八期(平成29年4月~平成30年3月)講義予定
◆第1時限 10:00~10:45
 元朝日新聞天声人語コラムニストの栗田亘先生に漢文や物語を解説して頂き、先人の教えを学びます。

◆第2時限 11:00~12:00
 各界で活躍されている先生方に「私の仕事・生き方・みなさんへの期待」などをお話し頂きます。

《平成29年》
 4月 9日 窪田哲夫先生  拓殖大学客員教授
        「日本人の心、佐藤一斎『言志四録』(大切な言葉)」
 5月14日 加藤憲一先生  小田原市長
        「命を守り育てる地域自給圏」
 6月11日 牧野義司先生  メディアオフィス時代刺激人代表(毎日新聞・ロイター通信OB)

        「混迷の時代にはジャーナリストが面白い」
 6月25日 公開講座 13時開場 13時半開演 小田原市生涯学習センターけやき(小田原市役所横)
       栗田亘先生    元朝日新聞天声人語コラムニスト
        「国語辞典を引く。国語辞典を読む」
       森武生先生   都立駒込病院名誉院長
        「どうして医者になったの? -世界に冠たる外科医になる 初心を貫いた医師の話-」
       小松由佳先生  フォトグラファー
        「K2への登頂 -情熱が可能性を生み出す-」
 7月 9日 鈴木洋嗣先生  文芸春秋社編集局長
        「『週刊文春』の出来るまで」                       
 8月27日 (小田原市尊徳記念館見学)
 9月10日 小松由佳先生  フォトグラファー
        「難民として今を生きる -ふるさとを失ったシリア難民-」
10月 9日 露木伸宏先生  運輸施設整備支援機構理事 小田原出身
体育の日  「わが国の海 知る 守る 広げる」(注目を浴びる海上保安庁の話)
11月12日 田中和雄先生  出版社童話屋代表
        「子どものころから本屋になりたかった」
12月17日 朝比奈豊先生  毎日新聞会長
第3日曜  「新聞論」
《平成30年》
 1月14日 柴田秋雄先生  元JR連合事務局長
        「より幸せな従業員をつくる」
 2月11日 向江隆文先生  元NHK沖縄放送局長
        「沖縄の歴史から “ぬちどうたから”(命が宝)と“ちむくぐる”(肝心)」
 3月11日 伏見勝先生    元報知新聞社長
        「強い大人になる -そのための読書・・・-」

2017年2月26日日曜日

小田原寺子屋スクール 仮認定のお知らせ

 小田原寺子屋スクールは、平成28年11月30日に仮認定NPO法人として登録されました。仮認定NPO法人とは、NPO法人の設立の日から5年経過しないもののうち、その運営組織及び事業活動が適正であって特定非営利活動の健全な発展の基盤を有し公益の増進に資すると見込まれるものとして、所轄庁の仮認定を受けたものをいいます(神奈川県ホームページより)。仮認定されましたので、確定申告時、寄付金の税控除申請が出来る様になりました。今後とも本活動へのご支援の程、宜しくお願い申し上げます。

内閣府NPOホームページ
https://www.npo-homepage.go.jp/about/houjin-info/shokatsunintei-meibo/pref-kanagawa

2017年2月16日木曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年2月度の授業

平成29年2月12日(日)に2月度の授業を行いました。

【第一時限】 栗田亘先生

 授業の前半で「儒教」、「孔孟」、『論語』、『孟子』について解説して頂きました。「儒教」は孔子の教えを基礎にした政治・道徳の学問のことで、「教」という字が付いていますが宗教ではありません。「孔孟」は孔子と孟子の2人をまとめた呼び名です。『論語』は孔子の言葉や行い、孔子と弟子との対話をまとめたもの、『孟子』は孟子の言葉や行い、孟子と弟子との対話をまとめたもので、どちらも儒教を学ぶ上での聖典とされています。
 今月は、孟子に関係のある「孟母三遷の教え」という言葉を学びました。孟子の母は、わが子(孟子)の教育のために三回引っ越しをした、子どもを教育するには周囲の環境が大切だという教訓です。「遷」という字は、よそへ移るという意味です。孔子や孟子の言葉から、教訓や文字について多くを学ぶことができますが、その教えをそのまま鵜呑みにするのではなく、本当にそうだろうか?と疑問を投げかけてみると、考えや理解をさらに深めることができることを教えていただきました。

【第二時限】 山口憲明先生(前コナミ副社長)

 山口先生は、大学卒業後28年間、銀行に勤められた後、50歳の時に転職され、その後22年間ゲームソフトの会社「コナミ」で活躍されました。転職はまさに人生の転機で、どうしようかと迷われたそうですが、やるか、やらないかを迷った時には、やることを決断する方が良いというのが先生の教えです。また、人生には楽しい時ばかりでなく、つらい時もありますが、そんな時には趣味が役に立つこと、自分の好きな事をやると良いということも教えていただきました。趣味は、友達を増やし人生を豊かにします。
 授業の後半では、ご自身のメキシコ、カナダ、タイでの海外生活経験から、子どもたちに海外へ行くことのススメ、英語以外にもう一つ語学を身に付けることのススメと、外国人に通じる英語を話せるようになるには、sとth、l(エル)とr、bとvを使い分けることがポイントであることを説いていただきました。授業の最後に、趣味で続けられている南米の楽器ケーナで「コンドルは飛んでいく」を演奏され、また、スペインの歌「グラナダ」で迫力のある歌声を聴かせて頂きました。


 次回、平成29年3月度の授業は、3月12日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は藤原勇彦先生(ジャーナリスト・元朝日新聞記者)をお招きします。藤原先生の講義タイトルは、「森って何だろう-人間の個性と文化の母-」で、森と人間との関係についてのお話です。

2017年1月14日土曜日

小田原寺子屋スクール 平成29年1月度の授業

平成29年1月8日(日)に1月度の授業を行いました。

【第一時限】窪田哲夫先生(拓殖大学客員教授)

 12月に引き続き佐藤一斎の授業です。佐藤一斎は岩村藩(岐阜県恵那市)の出身で、明治維新を成し遂げた佐久間象山、山田方谷、西郷隆盛、坂本竜馬、吉田松陰などそうそうたる志士に影響を与えた先生です。一斎の生まれた「美しき日本・恵那市岩村」の映像から、今でも恵那の人々が一斎の教えを家々の入り口に掲げて学んでいることを知りました。また「美しい日本・小田原」の映像から自然に恵まれた小田原、明治の偉人で吉田松陰の弟子でもある伊藤博文、山県有朋、経済人では大倉喜八郎、益田孝、文学者の北原白秋、谷崎純一郎などが愛した小田原であること。また、小田原の基礎を作った北条早雲の早雲寺殿廿一箇条は「心を素直に柔らかに持ち、正直かつ公正であらねばならない」という精神に貫かれていること。小田原には私たちが学ぶべきものがたくさんあることを教えていただきました。
 全員で、起立し姿勢を正し、左手を腰に当て、右足を一歩引いて、右手のこぶしを軽く握り、手前に引く時「よし」の掛け声を発するとともにこぶしに力を込める練習をしました。これを繰り返すと不思議と力が湧いてきます。迷ったときや弱気になった時これをやったら良いと教えていただきました。

 「士は当に(まさに)己に在る者を恃む(たのむ)べし。」
  →大事とは、己(おのれ)を恃み(たのみ)、創り出せ!
  →できないのではなく、しないだけのなのです
 「学者は、志 大にして 工夫は則ち(すなわち)皆小ならんことを要す」
  →大志を持ち、細事(さいじ)の工夫も弁え(わきまえ)よ
  →あきらめない限り、夢は必ず近づいてきます


【第二時限】河合忠彦先生(筑波大学名誉教授)

 河合先生からアメリカ企業と経済の復活や韓国企業と経済の追い上げにより、なぜ日本企業と経済が元気をなくしてしまったか、薄型テレビ・スマホの敗戦を切り口としてお話していただきました。アメリカ経済の仕組みは「大企業」「ベンチャー企業」「軍・政府」「大学・研究機関」この4者の相互連携システムが極めてうまく機能している。シリコンバレーはその典型であるが、日本の場合は大企業とその系列企業集団が経済システムの中心となっている。従って、研究・開発の対象も企業のコアビジネスに集中してしまって広がりに欠ける。ソニー、パナソニック、シャープに共通する敗因は一つはダイナミック戦略と基礎的戦略能力に欠け、さらにガラパコス化に見られるようにグローバルな視野・戦略も欠けていた。もう一つはコーポレート・ガバナンスの欠如、例えば業績を上げたトップの“天皇化”や退任後も影響力を行使するなどにより、環境の変化に対応し、戦略を変化させる柔軟性が欠けていた。
 これからの日本企業に期待することは(1)「シリコンバレー的仕組み」の導入(2)戦略の形成・実行能力の獲得―ダイナミック戦略の実現・基礎的戦略能力の獲得・グローバルな視野・戦略の獲得―(3)コーポレート・ガバナンスの実現―トップの任期制の確立― が求められる。
 最後に自分の興味を追求していくこと、創造性・革新性を追求していくこと、グローバルな視野を持つこと、そして国際社会も含めて社会に尽くすことが大切ということで結ばれました。


 次回、平成29年2月度の授業は、2月12日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は山口憲明先生(前コナミ副社長)をお招きします。山口先生の講義タイトルは「人生の転機と海外生活」です。